南極のオゾンホールとは?原因と回復をやさしく解説

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こんにちは!さいろじ研究所のさいろじくんだよ。

今日は「南極のオゾンホール」の話をしよう。名前は聞いたことがあっても、「オゾンって結局なんなの?」「どうして南極にだけ穴が空くの?」「あれって今どうなってるの?」って聞かれると、うまく答えられない人は多いんじゃないかな。ニュースで見なくなった今こそ、じっくり整理してみたいんだ。南極という舞台そのものにもっと興味がわいたら、南極で分かった5つの研究もあわせて読んでみてね。この記事は、その中の「オゾンホール」を深掘りする回だよ。

地球を包む薄いオゾン層を日傘に見立てた水彩イラスト。南極大陸上空の一部だけ層がふわりと薄く透けている。
地球を包む薄いオゾン層と、南極上空で薄くなった部分

結論:オゾンホールとは何か、いま何が起きているか

  • オゾン層は「生命の日傘」。 上空の成層圏(地上10〜50kmあたりの層)にある薄いオゾンが、DNAを傷つける有害な紫外線を吸収し、地表の生き物を守っている。
  • オゾンホールの原因は、人間が作ったフロンガス。 フロン(CFC)から出た塩素が上空でオゾンを次々に壊す。とくに南極の春(9〜10月ごろ)に、大陸を覆うほど大きくオゾンが減る現象がオゾンホール。
  • 最初に異変を観測・報告したのは日本(昭和基地)。 世界が大きく動いたのは1985年のイギリスの論文だが、日本の観測は当時疑われたのち、正しさが確かめられた。
  • 世界が協力してフロンを止めた結果、オゾン層は回復に向かっている。 今のペースなら、南極上空は2066年ごろに1980年の水準へ戻ると見積もられている(World Meteorological Organization, 2023)。

オゾン層が生き物を守るしくみ

まず、オゾンって何者かという話から。オゾン(O3)は、酸素原子が3つくっついたガスなんだ。僕たちが吸っている酸素(O2)は2つだから、それより1つ多いんだね。

上空の成層圏では、強い太陽の紫外線が酸素分子(O2)をバラバラの酸素原子に割って、その原子がまた別のO2とくっついてオゾン(O3)ができる。できたオゾンも紫外線を浴びるとまた壊れる。この「できる」と「壊れる」がつり合っているから、平常時のオゾンの量はだいたい一定に保たれているんだ(US EPA, 2023)。

オゾンがこの反応で紫外線を吸ってくれるおかげで、DNAを傷つけるような波長の短い紫外線(だいたい290nmより短いUV-B・UV-Cと呼ばれる光)が地表まで届きにくくなっているんだ(NASA Earth Observatory, 2023)。この光がそのまま降り注いだら、皮膚がんや白内障が増えたり、植物やプランクトンがダメージを受けたりする。だからオゾン層は、上空に張られた薄いけれど頼りになる「日傘」なんだよ。薄い、というのは本当に薄くて、仮に地表の気圧まで集めても数ミリの厚さしかないと言われるくらいなんだ。

フロンがオゾンを壊すしくみ

フロン(CFC=クロロフルオロカーボンの略)は、炭素にフッ素と塩素がくっついたガスだよ。1930年代に冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレーの噴射剤として実用化されて、大量に使われるようになったんだ。なぜそんなに広まったかというと、無毒で、燃えなくて、化学的にとても安定——つまり「扱いやすくて安全」な便利ガスだったからなんだ(US EPA, 2023)。

ところが、この「安定さ」こそが問題だったんだ。安定しているということは、地表近くの空気の中ではなかなか壊れないということ。だからフロンは分解されないまま何十年もかけてゆっくり上昇して、はるか上の成層圏まで届いてしまう。そこには地表まで届かない強い紫外線が待っていて、ついにフロンを割る。すると中から塩素原子(Cl)が飛び出すんだ。

問題は、この塩素が「触媒」としてはたらくこと。触媒というのは、自分は使い減りせずに反応だけを進める仕掛けのことだよ。塩素はオゾンを壊しても、また元の塩素にもどる。化学の式で書くと、Cl+O3→ClO+O2、そのあとClO+O→Cl+O2、というふうにぐるぐる回るんだ。この輪が続くから、1個の塩素原子が何千・何万というオゾン分子を次々に壊していく

これを1974年に警告したのが、化学者のモリーナとローランドだよ。安定なフロンが成層圏で紫外線に分解されて塩素を出し、それがオゾンを連鎖的に壊す、と論文で予言したんだ(Molina & Rowland, 1974)。当時は「そんな上空の話が地上の便利ガスと関係あるの?」と半信半疑の人も多かった。でも二人の指摘は正しくて、のちにこの功績で1995年のノーベル化学賞を受けているんだ(The Royal Swedish Academy of Sciences, 1995)。

フロンが地表(冷蔵庫やスプレー缶)から成層圏へ昇り、太陽の紫外線に分解されて塩素を出すまでを、大気の縦断面で描いた水彩の図解。
フロンが成層圏まで昇り、紫外線に分解されて塩素を出すしくみ

「南極の春」にだけ深い穴が空く理由——極渦と極成層圏雲

フロンは世界中で使われたのに、どうして穴が空くのは南極だけなんだろう。しかも一年中ではなく、春先だけ。

カギは南極の冬の特殊な気象なんだ。

まず南極の冬は「極夜」といって、太陽が昇らない暗闇の季節が続く。このとき南極の上空には、強い西風がぐるぐると渦を巻いて、大陸上空の空気を外から孤立させる「極渦(きょくうず)」ができるんだ。孤立して外の暖かい空気が入ってこないから、中の空気はどんどん冷えて、マイナス80度ほどの極端な低温になる。

南極の冬の極渦と極成層圏雲から、春の日差しでオゾンが壊れるまでを、夜から朝へ移り変わる一枚の水彩の空として描いた図解。
南極の冬の極渦と春の日光でオゾンホールが深まるしくみ

すると、ふだんの上空では起きないことが起きる。あまりの寒さで「極成層圏雲(PSC)」という特別な雲ができるんだ。地上の雲は水滴だけど、これは硝酸や氷でできた雲だよ。この雲のつぶの表面が、化学反応の「作業台」になる。ふだんは無害な形でしまわれている塩素(塩化水素HClや硝酸塩素ClONO2といった「塩素の貯蔵体」)が、この作業台の上で反応して、日光が当たれば一瞬でオゾンを壊せる、反応性の高い塩素へと作り替えられる。暗い冬のあいだに、オゾンを壊す準備が静かに整っていくんだ(Solomon et al., 1986)。

そして春。9〜10月になって太陽がもどってくると、用意されていた塩素にいっせいに光が当たって活性化して、オゾンを一気に破壊する。だから「南極の・春に・急に」穴が空くんだ。

じゃあ北極ではどうか、と思うよね。北極にも極渦はできるけど、南極ほど強くも寒くもないんだ。だから特別な雲ができにくくて、南極のような深い穴にはなりにくい。同じ地球の極でも、南極と北極でオゾンの回復時期がずれる(後で出てくるよ)のは、この力学と温度の違いが効いているんだ(WMO/UNEP, 2022)。

なお、1980年代当時は「太陽活動の11年周期のせいだ」「ジェット気流のいたずらだ」といった説もあったんだ。でもその後の観測と化学モデルの積み重ねで、そうした自然要因ではなく、人間が出したオゾン層破壊物質(おもにフロン由来の塩素と、ハロンという消火剤由来の臭素)が主な原因だ、という結論で決着しているんだ(WMO/UNEP, 2022)。

発見の経緯——地道な観測と、一枚の論文

オゾンの量は「ドブソン単位(DU)」という単位で表すんだ。南極の春の平年はおおむね300DU前後で、そこから大きく減って220DUを下回った領域をオゾンホールと呼ぶよ。日本の昭和基地(南緯69度、東経約39度)では、気象庁がこの全オゾンを1960年代から測り続けてきたんだよ。長い記録があるからこそ、「いつもと違う」に気づける土台があったんだね。

1982年、その昭和基地で気象庁の忠鉢繁さんが、南極の春に異常な低オゾンを観測したんだ。同じ1982年からは「オゾンゾンデ」——気球にセンサーをつけて飛ばして、上空の高さごとのオゾンを測る観測——も始めていて、高度10〜25kmあたりでオゾンが特に大きく減っていることまで捉えていたんだ。

1984年、忠鉢さんはこの結果を、ギリシャで開かれた国際オゾンシンポジウムで報告したんだ(Chubachi, 1984)。ただこのときは、観測機器の校正がおかしいのではと疑われて、あまり注目されなかったんだ。

1985年、イギリス南極観測局のファーマンたちが、南極のハレー基地の長期観測から、春の全オゾンが1970年代後半以降に大きく減っていることを見つけたんだ。そして、その減り方がフロン由来の塩素が関わる季節的な化学と結びつくことを指摘して、Natureに発表したんだ(Farman et al., 1985)。この論文が、世界を大きく動かすきっかけになったんだよ。

その後、忠鉢さんの観測が正しかったことも確かめられたんだ。昭和基地の高度別のデータは、オゾンがどの高さで減っているのかを示していて、ハレー基地の結果を独立に裏づける証拠になったんだ(Chubachi, 1984; Chubachi, 1997; 綿抜, 1988)。

さらに、アメリカの気象衛星ニンバス7号などに積まれた観測装置が、地上の観測を裏づけてくれたんだ。オゾンの欠損が南極大陸をまるごと覆うほどの規模だと、宇宙から映し出したんだ。地図の上に「穴」があいたように見える画像と、その「オゾンホール」という呼び名が、世界中の関心を一気に集めることになったんだ(NASA Ozone Watch, 2024)。

その後——「最も成功した環境条約」と回復の見通し

原因が人間の出すフロンだと分かると、世界は驚くほど早く動いたんだ。1987年に「モントリオール議定書」という国際的な取り決めが採択されて、1989年に発効したよ。フロンなどのオゾン層破壊物質を、段階的に減らして最終的に全廃していくことを決めたんだ。その後も改正を重ねて規制を強めていって、最終的に197の国と地域すべてが参加する、国連の歴史で初めての「全員参加」の条約になったんだ。オゾン層破壊物質のおよそ99%が削減されて、「最も成功した環境条約」とまで評価されているんだよ(UNEP Ozone Secretariat, 2024; UNEP, 2024)。

ただ、止めればすぐ元通り、とはいかないのが難しいところ。フロンは安定なガスだったよね。その安定さのせいで、いったん空に出たものは大気からなかなか消えてくれないんだ。種類によって差はあるけれど、たとえばCFC-11で数十年、CFC-12だとおよそ100年という長い時間、上空に残り続ける。だから排出を止めても、影響が薄れるまでには相応の年月がかかるんだ(WMO/UNEP, 2022)。

それでも空は着実に良くなってきている。大気中のフロン由来の塩素・臭素は減り続けていて、南極のオゾンホールも2000年ごろを境に、ゆるやかな改善の傾向にあるんだ。最新のWMO/UNEPの科学評価(2022)は、このまま規制を続ければ、成層圏のオゾンが1980年の水準へ回復する時期を、世界平均でおよそ2040年ごろ、北極でおよそ2045年ごろ、そして南極でおよそ2066年ごろと見積もっているんだ(WMO/UNEP, 2022; WMO, 2023)。南極が一番遅いのは、さっき話したとおり穴が一番深いからだね。

これは「回復し始めている」であって「もう治った」ではないんだ。年ごとの変動は大きくて、大きな火山の噴火や大規模な山火事の煙などで、一時的にオゾンの減りが悪化する年もある。将来の予測もどんな社会シナリオをたどるかで多少前後する。それでも大きな流れとして、ちゃんと回復に向かっているというのは確かなことなんだよ。

南極オゾンホールの規模が拡大してピークに達し、その後ゆるやかに縮小・回復へ向かう流れを手描きの折れ線で示したイラスト。将来部分は破線で不確かさを表し、さいろじくんが回復の下り坂を指している。
モントリオール議定書以降のオゾンホール縮小傾向と回復の見通し

まとめ

  • オゾン層は生命の日傘。 上空のオゾンが、DNAを傷つける有害な紫外線を吸収し、地表の生き物を守る。
  • オゾンホールの原因は人間が作ったフロン。 安定ゆえに壊れず成層圏まで届き、そこで出た塩素が触媒として次々にオゾンを壊す(Molina & Rowland, 1974)。
  • 南極の春に深い穴が空くのは、極渦と特別な雲のせい。 暗い冬に反応性の高い塩素が用意され、春の日光で一気にオゾンが壊れる(Solomon et al., 1986)。
  • 南極オゾンの異変を最初に観測・報告したのは日本の昭和基地(Chubachi, 1984)。世界が大きく動くきっかけは1985年のイギリスの論文(Farman et al., 1985)。
  • 世界はフロンを止め、オゾン層は回復に向かっている。 南極上空は2066年ごろに1980年水準へ戻ると見積もられている(WMO, 2023)。

オゾンホールの話は、人間が地球規模の環境を壊してしまった話でもあるけれど、同時に、科学が原因を突き止めて、世界が力を合わせて直しつつある話でもあるんだ。地道な観測と、国境を越えた取り決めが実を結んだ数少ない成功例——僕はここに、けっこう希望を感じているよ。南極という現場から見えてくる発見は、ほかにもまだあるんだ。よかったら南極で分かった5つの研究ものぞいてみてね。それじゃあ、また次の記事で会おうね。⚡

参考文献

  1. Farman, J. C., Gardiner, B. G., Shanklin, J. D. (1985) Large losses of total ozone in Antarctica reveal seasonal ClOx/NOx interaction. Nature, 315, 207–210. doi:10.1038/315207a0
  2. Molina, M. J., Rowland, F. S. (1974) Stratospheric sink for chlorofluoromethanes: chlorine atom-catalysed destruction of ozone. Nature, 249, 810–812. doi:10.1038/249810a0
  3. Chubachi, S. (1984) A special ozone observation at Syowa Station, Antarctica from February 1982 to January 1983. In Atmospheric Ozone (Proc. Quadrennial Ozone Symposium, Halkidiki, Greece), Reidel, pp. 285–289. doi:10.1007/978-94-009-5313-0_58
  4. Chubachi, S. (1997) Annual variation of total ozone at Syowa Station, Antarctica. Journal of Geophysical Research: Atmospheres, 102(D1), 1349–1354. doi:10.1029/96JD02366
  5. NASA Goddard Space Flight Center (2024) History of the ozone hole (Southern Hemisphere) — TOMS/Nimbus satellite monitoring and discovery. NASA Ozone Watch.
  6. Solomon, S., Garcia, R. R., Rowland, F. S., Wuebbles, D. J. (1986) On the depletion of Antarctic ozone. Nature, 321, 755–758. doi:10.1038/321755a0
  7. NASA Earth Observatory (2023) Ozone (stratospheric ozone formation and its role in absorbing ultraviolet radiation).
  8. US EPA (2023) Basic ozone layer science.
  9. The Royal Swedish Academy of Sciences (1995) The Nobel Prize in Chemistry 1995 — Crutzen, Molina and Rowland. NobelPrize.org.
  10. World Meteorological Organization / UNEP (2022) Scientific Assessment of Ozone Depletion: 2022 — Executive Summary. WMO Global Ozone Research and Monitoring Project Report No. 278.
  11. UNEP Ozone Secretariat (2024) The Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer.
  12. UNEP OzonAction (2024) About Montreal Protocol.
  13. World Meteorological Organization (2023) Scientific assessment confirms start of recovery of ozone layer.
  14. 綿抜邦彦 (1988) 南極のオゾンホール. 極地 No.46, 日本極地研究振興会.

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